メガネの裏はひとりじめⅠ



そんな高鳴る胸は未だ落ち着かないけど、でも少し余裕が出てきたあたしは思い付く。



まだこの乗り込んだ電車で行く行き先を聞いてなかったから『どこ行くの?』思い付いたことを聞いたら「ナイショ♪」って。出た。道留君お得意の秘密。



すぐに答えてくれないことにムーッとなる子供なあたしに道留君は苦笑混じり、繋がってない右手をぽんぽんとあたしの頭の上に弾ませた。



「可鈴も好きなとこだと思うよ?」



そう、言って。



あたしも好きなところだったら、そこに行こうとしてる道留君も好きな場所だってことだよね?



上手に道留君のセリフを解釈するあたしの頭。…脳みそ?



あたしも好きで道留君も好きな場所に行くことが分かったあたしはそれだけでムッとする子供なあたしとはあっさりおさらば。



電車の中だっていうのに気分が上がって、にこにこ。好きな歌を鼻唄で口ずさむ。



そんなとこはやっぱむちゃくちゃ子供で。道留君に「しーっ。」と人差し指を立てられるまであたしはずっと周りから見たら恥ずかしい人。



テンションが上がったからって取った自分の行動。静かに、でも隣に居ればバレバレ。



肩を震わし笑いをこらえる道留君にも恥ずかしくなって、まさに穴があったらそこに入りたい気分だ。



目的地の駅に着くまであたしは肩を竦め、しゅしゅしゅ…っと小さくなっていた。


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