メガネの裏はひとりじめⅠ
切符を買う時はあたしがふて腐れてたから自分で払うとは言えなかったけど、でもさっきはちゃんと自分で払うと言えた。言った。
なのに道留君は「こういうのは男が払うもんなの。」とか言っちゃって。
横で『自分で出す!払うの!』ギャーギャー騒ぐあたしを無視してあたしの分まで入場券を買っちゃった。
いくら切符代も、入場券代も払うと言ってもいいの一点張りの道留君にあたしはとうとう膨れてやったのだ。
奢ってもらうなんて、そんなのダメ。気を遣っちゃうもん。道留君がいいって言ってもあたしがダメなの。
『男だからとか、そんなの関係ないよ…?ちゃんと自分のお金持ってるから自分で払いたいの。』
エスカレーターに乗ってから、前だけを見ていたあたしは後ろを振り返って道留君を見下ろす。
背の高い道留君を見下ろすなんて普通なら絶対出来ないことで、少し変な感じ。
あたしに見下ろされる道留君は振り返ったあたしにふぅ、と息を吐いてから「可鈴、着いたから降りて。」エスカレーターの終わりを教えてくれた。
そして、道留君もエスカレーターを降りると、人の邪魔にならないように隅っこへと連れて行かれる。