メガネの裏はひとりじめⅠ
隅っこの方に連れて行かれて、壁に背を付いたあたしを見下ろす道留君は早速「あんね?」と、唇を開いた。
「デートの時は彼氏が彼女の分もお金払うってのが普通なの。」
『…やだ。』
「ん?」
『…っそんなのやだ。だって、道留君ばっかになるじゃん。』
「…可鈴。」
『あたしは、』
「可鈴は、俺の彼女でしょ?」
…っ。
あたしの言葉を遮って、小首を傾げながらそんなことを聞いてくる道留君はほんとにずるいと思う。
"好き"ってまだ伝えてないのに。まるで気持ちを見透かしているような漆黒の瞳にドキリと胸が鳴る。
この、質問。うん、って答えていいのかな?迷うあたし。
でも、"彼女になって"って昨日確かに言われたわけだし。あたしも"してください"って返事したわけだし。あたし、道留君、…好きだし。
道留君の漆黒をチラリ、一瞥して。言葉にするのは少し恥ずかしいからこくんと静かに頷いてみた。
頷いてから、顔は俯かせたまま。だけど、見なくたって道留君がどんな表情を浮かべたかなんて伝わる雰囲気で分かってしまう。
『(…絶対嬉しそうに笑ってる。)』