メガネの裏はひとりじめⅠ
案の定。こっそりと持ち上げた瞳には嬉しそうにふんわりと笑ってあたしを見下ろす道留君。
「可鈴。」
こっそりと見たつもりだったのに、バレていた。
クツクツと楽しそうに喉を鳴らす音に、道留君、目ざといな。なんて。上から見ているんだから当たり前か。
見ているのがバレて、ちょっと、顔を上げきるのもなんだかなーなあたしは、パッとまた下を向いた。
うん。完全に顔上げるタイミングなくした感じ。
俯くあたしの耳は小さな布が擦れる音を捕らえる。それは道留君が動いた音で。
あたしから離れたわけじゃない。だって。だってだってだって…!
布擦れの音に次いで、耳が捕らえたもの。いや、もうこれは捕らえたとは言わない。道留君が、あたしの耳に、囁いた。と言う。
「可愛い彼女さん。彼氏がカッコつけたいから、今日は、許してもらえますか?」
『(…〜っ!)』
脳までビビビッと痺れるような甘〜い囁き。
身体中が熱い。特に囁かれた場所、右耳が一番ヤバい。心臓もバクバク。もうドキドキなんてそんな可愛い音じゃない。
卒倒してしまいそうになるぐらいのそれにあたしはヤジを飛ばした。もちろん、心の中で、だ。
カッコつけたいとかいいよ道留君っ。あたし死んじゃうよ。彼氏がカッコよすぎる病で。