メガネの裏はひとりじめⅠ



主語付きで言うなら早く魚見に行こと言った道留君に、お金、と言っただけで漆黒が鋭く尖った。しかも無言。ひゃっ。怖いよっ!



ビビるけど、でもあたしだって負けない!とか意気込みつつ、出た声は小さいし、道留君の表情を窺っているあたし。



何回言えば分かるの?そう、あたしの名前を口にする道留君の表情が言っていた。



しつこいって分かってる。でも、でも、だけど。



あたしだって、道留君があたしにしてくれること、まして今はお金が関わっていること。ちゃんとお返ししたい。あたしだけ、なんて嫌なんだもん。



『道留君、お願い。』

「…。」

『道留く、』

「じゃあ、オムライス。」

『…え?』

「オムライス、奢ってくれる?」



参りました。まさにそんな表情で苦笑しながら見上げる道留君は折れてくれた。



『…うんっ!』

「(俺、可鈴に弱ぇー…。)」



えへへ、と笑うあたしは道留君オムライス好きなんだーと、道留攻略ノート1ページ目の裏に書き込んでおく。覚えとかなきゃ。


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