メガネの裏はひとりじめⅠ
な、何でこんな近いの…っ。どんな展開、って、ああああー!王子様の表情、が。ムッてなっちゃってる…。
気づいた王子様のその表情に少し焦る。どどどどうしよう。だけど王子様がそうなるのも当然と言えば当然、か。
キスをするすれすれ寸前でチャイムが鳴り響き、"おあずけ"を食らった王子様はあたしみたいに"嬉"の気分なわけがない。言うなれば"怒"。
しかも盛大なタメ息を吐かれては、それはより一層で。
秀麗な顔は、かなり不服そうな表情を浮かべていた。
「タメ息とかかなり傷つくんですけど。」
離れている距離、推定僅か3センチメートル。
超至近距離にある美顔は、ブスッと小さな子供みたいに不貞腐れて拗ねた口調でそう言う。
と、あたしの頬っぺたに添えていた自分の手の指で頬っぺたをむにゅっと痛くない程度に摘まんでくる。
そして、なにを思ったのか、次いでおもむろにあれだけ近かった顔と顔との距離を広げていくと、
「でも、」
と、言葉を紡いで、キュッと髪の色と同じ真っ黒な切れ長の瞳を優しく細めれば。
「可鈴だから許したげるね?」
なーんて。かぁあああ…っ。