メガネの裏はひとりじめⅠ



『…ふ、うぅ〜…、』



上げていた顔を鼻を摘ままれているから少しだけ俯かせ、いかにも泣いてます〜って声を出すあたし。いわゆる嘘泣き。



泣き虫が役に立ったと思ったこの瞬間。あたしってばかなり悪い子?



でも道留君が離してくれないから!仕方ない、ってことにしておこう。



鼻は啜れないけど、涙を零すことは任せて。はらはら、悲しくもないのに涙を零せる自分の演技力に感心する。



零したら、道留君が騙されてくれた。



「…可鈴、ごめん。離すから、ね?」



泣かないで、って続いた言葉のあとに道留君はすぐにそれを実行した。



…何だかなー。疑いもせず騙されてくれた道留君にちょっぴり罪悪感を感じる。



鼻から指が離れて、ここからどうするか。



嘘泣きを続行したまま振り向くか、嘘泣きでした〜っておどけて振り向くかの二選択。



嘘泣きでした、なーんて言ったら、道留君怒るだろうなぁ…。あたしが道留君の立場ならきっとイラッとすると思う。



離して欲しくて選んだこの嘘泣きという選択は間違っていたかも。



どうしよ〜…。


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