メガネの裏はひとりじめⅠ
うーん…と考えているのが道留君にバレないように顔を俯かせたままあたしは考え込む。
と。
手を離したのに顔を上げないあたしを不思議に思ったのだろう。
道留君は「可鈴?」名前を呼んで、くるりとあたしの身体を回した。焦り出す、あたし。
「…そんなに、嫌だった?」
『(っ道留君…。)』
まさか、である。顔を上げなかったことが裏目に出てしまった。
道留君の声が、落ち込んでいるような悲しそうな。そんな色を奏でてしまっている。
こんなことなら怒られてもいいから嘘泣きでしたって正直に言えばよかった。ううん。今からちゃんとごめんなさいって言う。
道留君には笑っていて欲しいって思ったのだから。
回された身体は好都合。顔を上げればすぐに道留君の漆黒とかち合うことが出来る。
躊躇いとか、恥ずかしさとかは今はいらない。
『道留君…、あの、ね?』
ちらり、と控えめに持ち上げた瞳の先にはあたしを真っ直ぐに見つめる漆黒。うん、と相槌が返ってくる。