メガネの裏はひとりじめⅠ
『えっと、ね?』
「ん?」
『さっきの…、』
「さっき?」
『っい、今の、』
「今?」
『そ、そうっ。今…、』
「…。」
『(ふえーん。何て言えばいいの〜…。)』
言うって決めたのはいいけど、あたしのこの空っぽの頭じゃ上手い言葉が見つからない。
ストレートに嘘泣きでした〜って言うのはかなり気が引ける。嘘泣きだったことは明かすんだけれど。
全然先に進まないあたしのセリフに優しく、ちゃんと相槌を打ってくれる道留君にふざけるのはない。なさすぎる。
えっと、違くて、あの、なーんて。意味の分からない言葉を並べてあたふたするあたしを見下ろす道留君は。
「ふはっ。何が言いてぇんだよ。」
吹き出して、クツクツと可笑しそうに喉を鳴らした。わ…、笑ってくれた…!
ぱぁっとあたしにも笑顔が咲く。
ただ単純に道留君が笑ってくれたことが嬉しくて。へへっと笑っていると、「なぁに笑ってんの?」ふんわりと柔らかい笑みを浮かべる道留君。
『(うっ…。かっこいー…。)』
「可鈴?」
『…っふ、え!?』
「言いたいこと。あるんでしょ?」
そうでした。