メガネの裏はひとりじめⅠ
それは、のあとの上手なセリフはまだ思いついていない。あたしのバカー!
思いついていないのに言いそうになって、そのおかげで道留君からは言って言ってという無言の視線が突き刺さってくる。
い、痛いよ道留君…。
今さっきまで思いっきり。道留君が勘違いするぐらい道留君を見ていたあたしはふいっと目を逸らす。
それが、道留君は気に入らなかったらしい。
「言って。」
『んにゃ!(鬼ぃいいい…。)』
逸らした顔は道留君の両手に包まれ、グイッと元に戻された。無表情で道留君は見つめてくる。無言の視線が辛い。
えっと、えっと、と自分でもびっくりするぐらいの早さで空っぽの頭を回転させる。
ちらり、と考えながら泳がせた瞳はあたし達を魚群トンネルより怪訝な瞳で見ている周りの人達をとらえて。
『(ははは早く離れてもらわなきゃ…!)』
見られていることに気づいたあたしは無理。
言わなきゃダメなことそっちのけで道留君の胸をバシバシ叩き、『み、見られてるよぉ…!』道留君に訴えた。
け、ど。
「うん。で?何言おうとしたの?」
素敵にスルーされた。されてしまった。