メガネの裏はひとりじめⅠ
と。
「やっぱ可鈴、嫌だったんじゃん…。」
不意にあたしの頭上約30センチぐらい上から沈んだ低音が降ってきた。ど〜んよりしている。え、道留君…?
何だどうしたと見上げれば道留君は俯いていて、下から見ているのに影って表情は見えない。
え、え、え!?
道留君の不意なセリフ。どんより落ち込んでいる意味が掴めなくて。
困惑が生まれる中、『道留、君…?』控えめにおずおずと名前を呼んでみた。ら、口を開く道留君。
「指、離して欲しかったんでしょ…?」
『…え!?あ、あの、そう、…あ、違っ、』
「…。」
『(あぁ、バカ!あたし!)み、道留く、』
「…ショック。」
『っ、ごごご、ごめんなさ…!』
あたし、バカ。ドジ。あんぽんたん!
どんよりと道留君がいきなり落ち込み出した理由はあたしだった。
思わず、だけど思いっきり"そう"とか言っちゃったし…!道留君がショックと言うのは当然。ほんとにごめんなさい!!
もう少しで魚群トンネルから抜け出せるところで足を止めるあたし達は周りの人からしたらかなりの迷惑者だと思う。
道留君〜…。