メガネの裏はひとりじめⅠ



ウエートレスさんが去っていくと、持ってきてくれていたお水を道留君は喉に流した。



その姿さえも絵になってしまう。それぐらい道留君はかっこよくて。



駅でも、水族館を回っている時だって。女の人の視線を集めていたことを知っていた。



あたしだって、道留君に微笑まれたりしたらかぁってすぐに真っ赤になっちゃう。けど、他の人に微笑んで、その人が照れたりするのは嫌だ。



…あ、れ?これってヤキモチ、なのかな…?



『っ、』



胸に生まれたモヤモヤの意味に気づいたら、一気に恥ずかしくなってたまらなくなった。



顔中に熱を帯びて、カッカッする。道留君と面と向かっていられるはずもなく、バッと下を向いた。



そんな、あたしに。お水を飲んでいた道留君はすぐに気がついて。「可鈴?どした?」柔らかい声が飛んでくる。



無言でフルフルとかぶりを振るあたし。



「どうもなくないだろ?」

『…、』

「可鈴?」

『…何も、ないから…。』

「…はぁー…。」



吐き出されたタメ息。それがチクリと胸に刺さった。途端、視界がぐにゃっと歪む。


< 137 / 281 >

この作品をシェア

pagetop