メガネの裏はひとりじめⅠ
ウエートレスさんが去っていくと、持ってきてくれていたお水を道留君は喉に流した。
その姿さえも絵になってしまう。それぐらい道留君はかっこよくて。
駅でも、水族館を回っている時だって。女の人の視線を集めていたことを知っていた。
あたしだって、道留君に微笑まれたりしたらかぁってすぐに真っ赤になっちゃう。けど、他の人に微笑んで、その人が照れたりするのは嫌だ。
…あ、れ?これってヤキモチ、なのかな…?
『っ、』
胸に生まれたモヤモヤの意味に気づいたら、一気に恥ずかしくなってたまらなくなった。
顔中に熱を帯びて、カッカッする。道留君と面と向かっていられるはずもなく、バッと下を向いた。
そんな、あたしに。お水を飲んでいた道留君はすぐに気がついて。「可鈴?どした?」柔らかい声が飛んでくる。
無言でフルフルとかぶりを振るあたし。
「どうもなくないだろ?」
『…、』
「可鈴?」
『…何も、ないから…。』
「…はぁー…。」
吐き出されたタメ息。それがチクリと胸に刺さった。途端、視界がぐにゃっと歪む。