メガネの裏はひとりじめⅠ
「…あ、あのー、お客、様…?」
『(え?)』
暫くおでこをくっ付け合いっこしながらお互い照れくさそうにはにかみ見つめあって。
端から見れば羞恥心というものがてんで皆無な超ド級のバカップルなあたし達に突然掛けられた細い声。
躊躇いが混ざるそれにぴくっといち早く反応したのは当然ながらあたし、で。
ばっとおでこを離して見てみれば、あたしがヤキモチ妬いてしまった根元の人。さっきのウエートレスさんがぽっと頬っぺたを朱に染めて立っていた。
『(う、わぁー!!)』
今さらになって沸き上がってきた羞恥。湯気が出そうなほど熱く真っ赤に染まる顔。
ばばっと慌てて勢いよく道留君の背中から手を離す。けど、あたしとは違い道留君は慌てる様子も恥ずかしがる様子も全くない。
逆にあたしが手を離したことに不満だと言わんばかりに眉を顰めてむっとする道留君。
しゅ、羞恥心を持って…!
切実な願いだ。
『す、すすすすみません…っ。』
「あ、い、いえ。こちらこそ申し訳ありません…っ。」
『そ、そんな…っいえ。…ごめんなさい、です…。』
「(ふはっ。…焦りすぎ。可愛いなぁ。)」