メガネの裏はひとりじめⅠ
「(でもちょっと黙って見とこ。可鈴妬くし♪)」
なーんて。
あたしとウエートレスさんを見て、道留君が楽しそうに表情を緩ませ心の中で笑っているなんて知るはずもなく。
あたしとウエートレスさんは気まずすぎるぐらい気まずい空気が漂う中で両者共に顔を赤くして暫く控えめに見つめあう。
と。
「(こら。ぼーっとしてんな。)」
「っえ、あ、わ、すみませんっ!」
手にシルバーのトレイを持って通りかかったウエーターさんが耳元で小さくウエートレスさんに声を掛けた。
ウエーターさんに何か言われたウエートレスさんの背筋がはっとしたようにぴんと伸び、見つめあっていた目があたしから外れる。
心なしか今よりも赤くなったウエートレスさんの顔。
声を掛けられた耳を手で押さえて謝る姿を見て、もしかして…と、あたしは思った。
立ち去り際、ウエーターさんがウエートレスさんに一言言うと、頷いたウエートレスさんにウエーターさんは優しく微笑んで。
…うん。絶対この二人、両想いだよ。
付き合っているのかは分からないけど。でも好きな人と一緒に働けるのって、毎日楽しいだろうなー…。
あたしも、道留君と。なーんて、えへへ♪広がる妄想の世界。
「も、申し訳ありません。お料理の方をお持ちいたしました。」
『…っあ、は、はい!』