メガネの裏はひとりじめⅠ
◆優等生は仮面を剥いだ
あたし、満芭可鈴は今、黒板の前でクラスのみんなの注目の的。
そんなあたしはニッコリと綺麗な笑顔を浮かべているのに瞳は1ミリたりとも笑ってはいない目の前に立つ担任のリュウちゃんに引きつった笑顔を向けていた。
「可鈴。俺様の授業に遅刻して来るとはいい度胸してんな?」
『あ、あははははー…』
わわわ忘れてたぁ…。
朝から三木に酷い言われ方でバッサリとフラれ、それから突然現れた見ず知らずの綺麗すぎる王子様に涙を拭ってもらって。
そんなあたしの中では"大事件"と言っても過言ではない出来事が立て続けに起こり、1限目の授業がリュウちゃんの化学だってことをすっかり頭から抜けさせたまま普通に教室に入ってきてしまったバカなあたし。
ドアを開けて姿を現した瞬間。
こちらに顔を向けて今現在も浮かべているこの怖すぎるリュウちゃんの恐怖のニッコリ笑顔があたしに向けられて。
それを目にした途端、一瞬にして身体が人形みたいにカチーンと固まってしまったんだっけ。
マジでリュウちゃん怖い…。