メガネの裏はひとりじめⅠ



途端にドクンッて。心臓が大きく跳ねる。不安が襲って、キリキリ胸が痛くなる。



ぴょこんって寝癖のついた漆黒の髪。長い前髪とメガネに邪魔をされて見えにくくても、あの笑顔は道留君のものだった。



土曜日、デートの時にいっぱいあたしにくれた笑顔だった。



『…っ、』



やだ、やだ、やだ。他の女の子があの笑顔を知るなんてやだよぉ…。



また現れる、醜い感情。重たい気持ち。独り占めしたいって。あたしだけが知っておきたいって。独占欲が心に溢れていく。



それに次いで、あとから嫌われてしまったんじゃないかという不安が一気に襲ってくる。



デートでの失敗があるから、思わずにはいられない。ドクンッドクンッ。心臓が騒ぐ。溢れた涙はぽたぽた床を濡らす。



嫌われてしまったなら、それは自業自得。わがままで面倒くさい自分がその原因。



でも。


嫌われても、あたしは好きだもん。諦めきれないよ。それにまだ好きって言ってないんだよ?ちゃんと言いたい。伝えたい。



フラれたら、簡単には無理だろうけどその時は諦める。フラれたのに未練がましいそんな面倒くさい女にはならない。



面倒くさい女は卒業、って決めたんだもん。


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