メガネの裏はひとりじめⅠ
パタパタパタパタ。
静かな廊下にはあたしの走る音だけがやけに響く。
プリントの存在なんてすっかり頭の中から消えていて。職員室の方には行かず、足は下駄箱目指してひたすら走る走る。
――…道留君に、伝えたかった。
だけど、今は恥ずかしすぎる。あんな失敗のあとで言う勇気なんてないよ…。絶対道留君もバカな女って呆れたに違いない。
あたしって、ダメな人間だと心底思う。だって、デートも今も。肝心な時に失敗ばっかり。ダメダメダメ子。
その失敗の所為で今日気持ちを伝えるって決めたのに。今日じゃなきゃダメだって思ったのに。簡単に無理だと諦めてしまう。
度胸がなさすぎる。
こんなんじゃ明日も明後日も。きっと無理ばっか言って諦めて、伝えることを延長し続けるんだ。
『っ、』
そんなのは、絶対嫌。
ちゃんとデートでの失敗を謝りたい。好きって言いたい。道留君の、正真正銘の彼女になりたい。
走るスピードは落ちる。止まった足を再び図書室の方に走らせようか。
『(でも…、)』
躊躇わせるのは、不安。嫌われてしまってるんじゃないかとか。さっきの女の子がもう本命なんじゃないかとか。考え出したら足が動かない。