メガネの裏はひとりじめⅠ
顔を上げれば"ん?"って、ゆるりと口元を緩める他の誰でもないあたしの好きな人。道留君。
メガネの奥の切れ長だけどぱっちり二重の漆黒とかち合ったあたしは、身体の奥から一気にぶわっと何かが沸き上がってきて。
『…っ、ふぇ…みちるくん〜…。』
瞳から、雨粒。
ぽろぽろぽろぽろ落ちるそれはギュッと抱きついた道留君のワイシャツを濡らしていく。
「…は?…って、ちょ、可鈴っ、」
なに言ってるか分からないよ?道留君。
こうやって慌てる道留君は多分レア物。だって毎回あたしばっか真っ赤にさせられて、道留君は余裕綽々だったから。
こういう道留君も、あたしだけが知ってていたいな。…なんて。
「…はぁ、もう。委員会抜けてきて正解。」
『…ふえ?抜けてきた、の…?』
「そうだよ?誰かさんがでっけぇ声で俺を呼ぶから。」
『っ!』
い、意地悪だ!いじめだ!言わなくていーじゃんかバカぁー…。
かぁっとまた熱を持つ顔。思い出しただけでも恥ずかしいさっきの失敗を道留君はクツクツ喉を鳴らしながら「可愛かったなぁ。」とかなんとか。
絶対あたしで楽しんでるなちくしょー…。
『…、』
意地悪な声と、ギュッとしてくれる優しい手があたしを自惚れさせる。