メガネの裏はひとりじめⅠ



歩き出して、それからすぐにあたしが席に座るのを待ってくれるなんて優しさはないリュウちゃんの淡々とした低い声が静まる教室に響き渡る。



それがさらにあたしの気持ちを沈めていく材料になっちゃって。



しかも、あたしの席は教室の一番端っこ。



そこへ目指すのにきちんとあたしみたいに遅刻せず席に着いて授業を聞いている人達の横を通らなくちゃならなくて、通る度に何故かチラチラと視線が向けられる。



うぅ…。見ないでよぉ…(泣)



向けられる視線に肩を竦めながらそそくさと足早に自分の席へと歩き着けば。



前の席に座るあたしの一番の友達である小鳥遊イブ(タカナシ イブ)が教科書でリュウちゃんから顔を隠して後ろを向き、ニヤニヤとレディーとしては少しはしたない笑みを浮かべコソコソとあたしに話し掛けてきた。



「三木先輩と密会ですかー?」



み、密会って…。



イブの発言に心の中で少し呆れながらあたしはカバンを机の横に掛けて『違いますー』小声で返事をし、やっとのことで椅子に腰掛ける。



それに次いですぐに机の中から化学の教科書はどこかと探していると。



「んじゃ、何で遅刻した?」



可鈴が遅刻とか珍しいじゃん。



そう付け足してイブから怪訝そうな声が飛んできたから、あたしは教科書を探す手を止めてそろり、イブに瞳を向けて口を開いた。


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