メガネの裏はひとりじめⅠ



急かされるがままに道留君の首に腕を回したけどさ。同居の話はもう終わりなの?



今の方が大事って、あたしには"すき"を道留君に伝えるいわば使命みたいなのがあるから大事だけど、道留君は何で大事なの?



よく意味が分からなくて難しい表情をしてみせたあたしを腕に乗せる道留君は一歩、歩み出す。



『み、道留君…っ、』

「ちょっと黙ってなさい。」

『っ、(反則、だ。)』



一歩、一歩。


リノリウムの床を上履きで歩きながら今の状況、状態に戸惑いを隠せないあたしが呼んだ道留君はまるで悪戯っ子だ。



そう言ってニッと上がった口角。



あたしから外れて前を見つめるメガネの奥の瞳はおもしろいものを見つけた小さな子供みたいにキラキラ輝いている。



『(…すごく、嬉しそう。)』



何が、だなんてやっぱり分からないけど。とにかく嬉しそう。



そんな道留君にドキドキしてきたあたし。胸がキューッてなって、苦しい。でも幸せな苦しみ。道留君に恋してるって証。



『(あぁ、やばい…。)』



今の状態。誰かに見られたりしたら顔から火が出ちゃうぐらい恥ずかしくなるんだろうな。…今も十分恥ずかしいけどね?


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