メガネの裏はひとりじめⅠ



ゆさ、ゆさ。


それでも小さく揺れる道留君の腕の中。別にどこかのお姫様じゃないけど"お姫様抱っこ"されて心地よい、なんて思うあたしがいる。



恥ずかしさの方が当然勝るけど、心地よい。



キュッと首に回す腕にちょっとだけ力を入れた。



鼻腔を擽る柑橘系の香りに埋もれていい匂い――…って、やだ!なんか変態みたいじゃんあたしっ。今のなしなし却下ー!



フルフルとかぶりを振って、自分がした行動が一番恥ずかしい…かも。



そんなまたしても失敗を繰り出したあたしは、道留君が足を止めるまで言われた通り唇を一度も開かなかった。偉い。



道留君は、見覚えのあるドアをあたしを抱いたまま開ける。



『(…生徒会室。)』



見覚えのあるドアは生徒会室のドア。ドアが開いた先には広い生徒会室。



パタン、とドアが閉まる音を合図に黙々と黒革のソファー目掛けて歩く道留君にあたしは数分振りに唇を開いた。



『何でここなの…?』

「一番安全だから。」

『(…また分かんない…。)』



あたし、あんまりここ好きじゃないのにな…。だって道留君があたしに隠し事してる場所だから。


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