メガネの裏はひとりじめⅠ
「うあー。超しばしばする。」
…なに、その可愛い擬態語。
落とした肩と一緒に下げた顔をちらりと持ち上げて道留君を見てみると、外した黒縁眼鏡片手にしばしばするらしい目をパチパチ。瞬かせていた。
目にかかる前髪の隙間からパチパチパチパチ。繰り返される瞬き。
…乾燥、してるのかな?って、それよりも気になるのが"しばしば"。こんな擬態語使ったことないよあたし。
一本、女としてやられた。イケメン王子・道留君がこーんな可愛い言葉を使うなんて。…いや、道留君が言うからこそ可愛いのかな?
ふっと頭の中に浮かんだのは、道留君に負けず劣らずの秀麗な顔をしたイブの王子、巳陵壱翔。
彼がこの擬態語を使ったら――…はははっ。想像しただけで恐ろしい。ひくひく。引きつっちゃうよ顔が。
巳陵壱翔は使うのはやめておいた方がいい。絶対。ていうかもとから使ったりしないか。"超目ぇ乾いた"の方が言うだろうな。…可愛くない。
「…よし。可鈴も身体こっち。」
しばしばする目は治ったのか。よしと言った道留君の手があたしの脇の間に入る。