メガネの裏はひとりじめⅠ
突然、真っ正面、間近から不機嫌全開のものすごいひっっくーいバリトンが鼓膜を擽る。
『ひえっ。』目の前の漆黒の瞳と目をかち合わせたあたしの肩は跳ねた。ビクッ!
「誰のこと考えてたの?」
『(ひぃいいい…っ。)』
怖い怖い怖い。リュウちゃん並みに怖いよイケメン王子!!
コテン、と首を傾げて笑ってる道留君。だけど、目が笑っていない。笑みを浮かべる秀麗な顔からは怒りが滲み出てる。怖い。
こ、ここは素直に言うべきか。ちょっと数日前を遡って三木を久しぶりに思い出していたって。
ああ、でも怖い。けど聞かれてるんだから答えなきゃ。ていうか何で道留君そんなに勘が鋭いの?あたし顔に出てた?…え、嘘。
道留君の怒る美顔を前にうるうる涙を下瞼に溜めながらあたしはペタペタ。自分の顔を触る。
すぐに何してんのって、怪訝な声が飛んできたけど。
「ペタペタやめて。聞いて可鈴。」
『…う、』
「三木のこと考えてたでしょ。」
『っ!?』
「だから怒ってんの、俺は。」
え、エスパーなのか!?
図星を指されたあたしはびっくりして、やめてって言われたのにペタッ。また顔を触る。