メガネの裏はひとりじめⅠ
拒んだ、といっても、理由なしに拒んだんじゃなくて。
純粋に生まれてから15年間。
付き合ったことはあってもキスとか経験したことがなかったからどんな反応をすればいいのか分からず恥ずかしかっただけなのだ。
けど、それがダメだったのかな…。
ぐすっと盛大に鼻を啜って、相変わらずおでこを膝にくっ付け蹲りながら止まることを知らない涙をぽろぽろ落としている、と。
ぽつり。唐突にあたしの目の前で紡がれる言葉。
「あんな最低ヤローのために泣いてんな。」
『(――…え?)』
紡がれたそれは低い音。男の人の声。あたしは今まで膝にくっ付けていたおでこをゆっくりと持ち上げる。
そして、涙でぐちゃぐちゃに視界が歪んだ瞳に映ったのは、
『(う、わ、)』
思わず漏れそうになった驚き。しゃがみこむあたしと同じように目の前でしゃがみこむ人形――…いや、人間。男の子。
芸能人顔負けの三木なんかもはやミジンコ。こんな男の子初めて見た。ていうかこんな綺麗な人自体、初めて見た。
微かに吹く風にさらさら揺れる少し長い艶やかな黒髪。顔のパーツは一つ一つ、どれも完璧。完璧すぎて、ほんとに作り物みたい。
瞳を奪われる。目が、離せない。