メガネの裏はひとりじめⅠ
だけど、みんなだって悪意があって道留君をそう呼んでるんじゃないんだと思う。
呼ばれてる道留君は嫌だと感じてるのかもしれないけど、ただ単純に外見だけを見て付けたあだ名で実際、クラス委員をしている道留君を頼ったりしている人だっているのだ。
あまり人に関わらないようにどこか壁を作ってる感じもあるけど、でも喋ってみたら絶対にいい人だとあたしは密かに思っているの。
まだ一言も喋れたことがないんだけどね(泣)
――…っていうか、あれ?
自分の席に着いて机の横にカバンを掛けた道留君は顔を上げ、メガネ越しに瞳をあたしの方へと向けてきている。
あたしの自惚れだとか気のせいなんかじゃなくて。
あたしの前に座るイブはあたしが途中で話を止めて道留君へと視線を持っていってしまったからか、今は横を向いて自覚があるであろう長い脚を組み、教科書読んでまーすってフリしながらカチカチと携帯を弄っていて。
他の人達は前を向いてちゃんとリュウちゃんの授業を聞いているのだ。
必然、瞳がかち合うのは道留君を見ていたあたしだけになるわけで。
瞳がかち合っているわけだから逸らしたりするのは感じが悪すぎるのでヘラリ、取り敢えず笑顔を浮かべてみるあたし。
そしたら道留君はメガネを掛けているから瞳は見えないけど、朝出会った王子様と同じ絆創膏を同じ場所に同じ貼り方で貼ってある口許をゆるりと優しく緩めて笑顔を返してくれた。