メガネの裏はひとりじめⅠ
『(〜〜っ!!)』
掠れた囁き。どこか余裕がなさそうに、切羽詰まったようにそう言えば、3秒もあればあっという間に詰められる距離をゆっくり詰めてくる。
ドキン、ドキン。
心臓を騒がせている場合でもなければ、顔をリンゴからゆでダコに進化させている場合でもない。そんな余裕、あたしにはない。
だけど、今のは反則だ。なにあれ。フェロモンムンムン。色っぽくて、妖艶で――…、ああ、もう!バカバカバカッ。
『(道留君のあんぽんたん…っ。)』
ドキドキが止まらない。煩い煩い。すっごく煩い。あちち。顔は火傷しそうなほどの熱さ。
ここにきて、最後にそんな必殺技を出してくるなんて道留君は鬼だ。鬼畜だ。やっぱり意地悪ドS!
――…そんなことを思っているうちに、タイムリミットはすぐ未来。あと、1秒――…。
『…っす、すきっ!』
「……え?」
ぽかん。動きを止めた道留君はまさにそんな感じ。相変わらずあたしの顎を持ったまま目をパチパチパチパチ。
あたし、は。
『(…。)』
出る言葉もないくらい、自分の発言に激しく後悔していた。