メガネの裏はひとりじめⅠ



『あ、あたし、その…、』

「ん?」

『……分かんない、の。』

「…え?」

『…っや、り方、分かんないのぉ…。』



うるうる。こんなことカミングアウトしなきゃならないなんて思わなくって。恥ずかしさで浮かんだ涙で瞳を揺らしながら道留君に訴える。



高1にもなって、付き合ったこともある女がノーキス体験で。



しかもノーキス体験の理由がどういう反応したらいいか分からないから、とか。怖いから、とかで。



あたしにとってそれは恥ずかしいことじゃないけど(だってほんとのことだし)、でも、口に出してやり方が分からないと言うのは恥ずかしい。すっごく恥ずかしい。



しかも、き、キスしていい?って聞かれているときに。道留君に、言わなきゃならないなんて。…最悪、だ。



しーん、と。あたしがカミングアウトしてから漂う静寂。



数秒間、暫くそれが続いて。と、急に道留君は笑い出したのだ。ケラケラと。可笑しそうに。



「…ぶっ。はははっ!やり方、分かんないって!ははっ!」

『〜〜っ。わ、笑わないでよぉ…っ。』



ああ、もうほんとに。道留君は乙女心がてんで分かっちゃいない。バカバカバカーッ!


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