メガネの裏はひとりじめⅠ



とびっきりの笑顔と、チュッとリップ音を鳴らして唇よりも先に瞼にキスをした道留君に教えてもらったことは、すっごくシンプルだった。



"ただ、可鈴は目を瞑ってるだけでいい。"



そう教えてもらって――…とうとう、きてしまった。やってきてしまった。この、時が。



「じゃあ、目ぇ瞑っててな?」

『う、うん。』

「…あ。チュウしてい?ダメ?」

『っん、な!なん、で、』

「だってまだ可鈴から"いいよ"って聞いてないしー。」



にやにやにやにや。意地悪く唇の端を持ち上げて、意地悪な表情で意地悪なことを言う道留君は絶対確信犯。



分かってるくせに。あたしの返事なんて。ていうか、あたしが"いいよ"って言うこと決定しちゃってるじゃん!



んん〜…。恥ずかしいなぁ、もう…。



『…っし、しよ…?』

「っ!…やっべー…、参った。降参です。」



くしゃっと目尻にシワを作って苦笑い。なにが参ったのか、降参なのかあたしには理解不能。



多分、ね。聞いてみても道留君は教えてくれなさそうだから聞かないけど。



それよりも今は「はい、目ぇ瞑って。」こっちの方が100万倍大事っ!


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