メガネの裏はひとりじめⅠ
くしゃっと苦笑いから道留君の纏う雰囲気は一気に変わった。
何て言うか、色っぽくて、妖艶で、大人っぽいっていうか――…ほんとに高校生?あたしと同い年?って、思っちゃうほど大人な雰囲気にがらり。一変。
加速していく心拍数。やっぱり騒がしくて煩くて。顔も相変わらず熱々。うっすーいお肉なら焼けちゃうよ多分。
そんな顔の輪郭に添うように手のひらがくっ付く。それを合図にあたしはギュッ。言われた通り固く目を閉じた。
「かわいー♪」
クツクツと。喉を鳴らしながらやけに楽しそうに言う声が暗闇の中に入ってくる。
と。
次いですぐにチュッとさっき瞼の上で鳴ったリップ音が響いた。
それと同時に、触れた。柔らかくて、温かい感触が。唇、に。
「…、」
『…、』
「…あはっ。真っ赤。ウブだねぇ。」
唇が触れる前と同じようにクツクツ喉を鳴らす道留君。
さっきまでの大人っぽさはどこいった?ってぐらい、その笑う表情はあどけない。
心臓は未だ煩い。顔だって熱い。数秒前までと何ら変わりない。けど。
『(き、キス。しちゃった、んだ…。)』