メガネの裏はひとりじめⅠ
突然のことで頭の中は混乱。え、え、え。き、ききキスされてるの!?とりあえずギュッと目を瞑った。
――…瞑った、けど。すぐにあたしは顔を顰めた。
だ、だって、さっきのき、キスと違う。全然違う。一瞬で終わらないし。それになにより、口の中に何か入ってきた。
『(な、に、これ…。)』
さらにあたしは顔を顰める。入ってきた"何か"は口内で暴れて、逃げようとするあたしの舌を捕まえて、絡める。
ちゅくっと鳴った水音がすっごく恥ずかしい。息も苦しいし、頭の中は真っ白。もうなにも考えられなくて、あるのは息苦しさと羞恥だけ。
――…もう、やだ…っ。
そう思ったら、目尻から熱々の頬っぺたに一筋、線が流れた。
『…んぁ、う、やあ…っ、』
こんなの、やだ。これもき、キスなの?やだやだやだ。このき、キスは嫌い。怖いよ。やだぁ…。
ぽろぽろ。一筋流れた涙に続いて、次々と頬っぺたを伝って落ちていく涙。
頭を手に包まれているあたしは顔を背けることも、逃げることもできなくて。泣くしかできることはなくて。
暫くすると、チュッとあたしの唇を最後に吸って離れた唇は怪しく光る銀糸を引いた。