メガネの裏はひとりじめⅠ
「んじゃ、行こっか?」
いきなり。ほんとにいきなり。まるでケーキの中にいるみたいな甘ったるい空気の中、言い出した道留君。
行く、って、どこへ?
きょとんと道留君を見つめ、ハテナマークを頭の上に浮かべたあたしに、今までずーっと道留君の首に回っていた腕を道留君は優しく解きながら、
「祝ってもらわなきゃだろ?」
"可鈴がすきって言ってくれた記念に。"
うきうき。楽しそうに、嬉しそうに。嬉々とした表情で道留君はそう言う。
『…っい、いいいいい!!』
そんなお祝いいらない!やだ!ハズすぎるじゃん!フルフルかぶりを振ってすぐさま拒否。
ていうか、何であたしがすきって言った記念に、なの!?ここは"正真正銘の両想いになれた記念に"が正しくない!?
それならあたしだって、道留君が"すき"って言ってくれた記念にお祝いしてもらいたいよ。
『…りょ、両想い記念に、しよーよー…。』
ずるいずるい。"すき"って言ってくれて嬉しいのは道留君だけじゃないんだよ?お祝いしてもらいたいのだって道留君だけじゃない。
あたしだって、道留君と同じ気持ちだ。