メガネの裏はひとりじめⅠ
生徒会室の無駄に広すぎる室内が瞳に移り込んだと思うが否や。
どこからか伸びてきた手に腕を掴まれ引っ張られ、身体は無理やり室内に入れさせられて、開いたドアは静かな部屋に音を立てて閉まる。
な、何ごと!?
唐突なことでわたわたと混乱するあたしの頬っぺたに触れるのは甘い匂いがふんわりと鼻腔を擽る白い布と、その布越しに伝わる温かい体温。
それは何かと一つ息を吐いて一旦落ち着き、そこから頬っぺたを離し顔を上げていけば白い布はワイシャツだということが分かって。
温かい体温は悪戯に唇の端を持ち上げて、上からあたしを切れ長の綺麗な漆黒で見下ろしてくる人物――…。
やっぱりあたしの見間違いなんかじゃなく、口許に道留君と同じ絆創膏を同じ場所に同じ貼り方で貼ってある朝出会った王子様のものだった。
「悪趣味なことしてんな?可鈴ちゃん♪」
きょあっ…!
王子様の口から発せられた思いもよらないセリフにビクッと身体を反応させてギョッと目を見開き王子様を見つめるあたし。
そんな素直な反応を見せるあたしを見て王子様はクスクスと可笑しそうに喉を鳴らすと。
「まぁそこがかわいーんですが」
そう言っておでこに掛かる瞳の上で切り揃えたあたしの前髪を自分の大きな手で避け、そこにチュッと唇を押し当ててきた。