メガネの裏はひとりじめⅠ
きききき、キスされた…っ!!
異性と付き合ったことはあってもおでこなんかにキスしてくる人なんかいなくて。
唇ばっかにしてこようとする人ばかりだったから、おでこにキスされるなんて初めてのことで瞬時にかぁあああっと顔は耳まで真っ赤に染まっていく。
あたしにキスしてきた肝心の王子様はというとおでこから唇を離し、あたしの反応にまたしてもクスクスと可笑しそうに喉を鳴らして笑っている。
『わ、笑わないでよー…』
何でか笑われるのが嫌で。それでもって恥ずかしくって。
ゆるゆると涙で揺れる瞳を向けながら王子様にそう言葉を飛ばすと王子様はピタリと笑うのを止め、困ったように眉を下げたなら。
「ごめんね?」
って、そんな表情を向けて謝られたら許さないわけにはいかない。
キスされて真っ赤に染まった顔と、煩くドキン、ドキン、と脈打つ心臓を隠すようにあたしは王子様から瞳を逸らし俯いて、言葉の変わりにコクンと頷いた。
「可鈴優しい♪」
そんなあたしに降ってきた王子様のそう言った声は俯いているから王子様がどんな表情をしているのか分からないけど、だけどすごく嬉しそうな声色で。
その声聞いただけで何故か胸の奥がキューンと高鳴り、煩く脈打っていた心臓はさっきよりも煩く脈打っていく。
それはまるで"恋"をした時と同じ感覚で。
ほんとに好きだった三木と別れてからすぐにこんな気持ちが芽生えるのかと疑ったあたしはその気持ちには気付かないフリをして胸の奥へと閉じ込めたのだった。