メガネの裏はひとりじめⅠ
「――…さて、と。そろそろ事情聴取しよっかな?」
『うわわ…っ!』
部屋へ入れられた時から腰を王子様の腕でガッシリと抱かれ、身体と身体が密着している今この危険な体勢にも関わらず。
煩く鳴り止まない心臓を脈打つ音に"静まれ心臓…!"と、ずっと心臓に向かって心の中で叫んでいれば。
先ほどの嬉しそうな声色とは打って変わって今度は意地悪な声色を王子様はあたしに降り落としくると、次いで腰を抱いていた腕をあたしの膝の裏へと挿し込み、そのまま軽々とあたしを持ち上げてしまった。
『ヤダヤダヤダ!下ろしてっ!』
「ダメ。今から事情聴取するんだから」
大人しくしてね?
王子様の腕に抱えられながらジタバタと足を小さい子供みたいにバタつかせるあたしに王子様はニッコリと卒倒してしまいそうなほどの美しすぎる笑みを浮かべて幼稚園児なあたしを黙らせる。
その笑顔は卑怯だもん…。
美しい笑みを向けられ、抵抗も何も出来なくなったあたし。
だけどやっぱり幼稚園児は治らず、ムーッと膨れながら王子様にお姫様抱っこされた状態で部屋の真ん中を陣取っている黒革素材のソファーまで連れて行かれてその上に優しく寝かされ腕から下ろされる。
そして、何故か王子様は寝転ぶあたしの上に覆い被さるようにしてソファーに乗り、散らばるあたしの髪束を掬うように手に取って、それを唇に持っていき口付けた。