メガネの裏はひとりじめⅠ
「なに拗ねてんの?」
『…拗ねてないもん』
あたしの髪に口付けたまま、あたしを上から漆黒で見下ろしてくる王子様に赤く染まった顔を背けてそう言葉を返す。
顔を背けたのは、立っている時に見下ろされるのとはまた違った感覚に陥り、漆黒の瞳が降り注いでくるのに耐えられないのと。
髪に口付ける王子様の表情に、それから視界の片隅に入るボタンが大胆に3つも開けられてワイシャツの隙間から素肌がチラチラ見え隠れするのから逃れたかったからだ。
顔が赤く染まってしまったのも同じ理由。
だけど、そんな背けたあたしの顔はいとも簡単に王子様の手によって元に戻されてしまい、漆黒と瞳が絡んだ瞬間。
あたしの胸は大きく音を立てて高鳴り、『ヤダ…っ!』たまらず声を上げ、自分の手のひらを王子様の顔目掛けて伸ばしてしまった。
あ…、と思ってしまっても時すでに遅し。
見事あたしの手のひらは王子様の酷く端整な顔にピッタリとくっ付いて。
漆黒は隠れたものの、あたしの瞳には涙がジワリジワリと溢れていった。