メガネの裏はひとりじめⅠ
パチパチ。パチパチ。
何度も瞬きして見入ってしまうほどに中性的で綺麗すぎるってぐらい綺麗な顔。…の、口元には痛々しくも絆創膏がぺたり。
『(口、切ったのかな…。)』
少し、気になる。けど、そんな疑問よりまずこの美男子さんはいったい誰なのか。
初対面。知らない男の子。知っていて忘れたならその頭はかなりやばい。病院に行くのをおすすめします。
だって、すれ違っただけでも記憶に残りそうなほどの顔をしてるんだよ?それくらいにね、綺麗。
と、気づけばあまりの美しさに流れていた涙はいつの間にか止まっていた。あんなに流れていたのに。恐るべし、イケメンパワー。
「…ねぇ、」
『ひえっ、』
ななな何ですか!?
突然、開かれた赤い唇。突然すぎて目の前の美顔に見入っていたあたしは肩を上げて素っ頓狂な声を出してしまった。
照れる。ふつうに恥ずかしい。
かぁっと赤くなったあたしに王子様はフッと小さく笑う。
『(うう〜…。)』
それを見逃さなかったのはミスだ。さらにカカカッと赤みを増したあたしの顔。
…に、またも突然。王子様は手を伸ばしてきて。その手の長くて細い綺麗な指が目尻に溜まったままでいた涙を優しくグイッと拭ってくれた。