メガネの裏はひとりじめⅠ



「何で俺ん後付けてたの?」

『ふぇっ!?』



その"本題"とやらが単刀直入すぎてあたしは思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、瞬きをパチパチと繰り返して王子様を凝視する。



や、やっぱりバレてた…?



あたしのちょっと離れた先で歩いてた道留君は一度も後ろを振り向いたりしなかったから絶対にバレてない自信はあった。



完璧に成功したと思ってたんだけどなぁ…。



尾行してた本人に気付かれていたと本人から知って、完璧だと思っていたから尾行失敗の悔しさは通常の悔しさよりも多くガックリ、肩を落としたのもほんの束の間。



あたしは落とした肩を上げ、目の前にあたしと向き合って座る王子様を瞳に映し出した。



『…やっぱり、王子様の正体は道留君だ…』

「……何で?」

『だって…、』



――…だって、あたしが尾行してたのは道留君で、王子様がそれを知ってるはずないんだもん。



それに、王子様は自分から"何で俺ん後付けてたの?"って、さっき聞いてきた。



初めにこの生徒会室に入れられた時も尾行されてないはずの王子様はあたしに"悪趣味なことしてんな?"そう言ってきていて。



もうその時点で答えはすでに出ていたんだ。



あぁ、やっと謎が全て繋がった。



道留君と王子様の絆創膏が同じ色形で、偶然でもそうそうない同じ貼り方に同じ場所だったこと。



漆黒の髪も同じだし、今まで一回もしなかった遅刻をして来た理由だって、あたしの涙を拭ってくれていたから。



名前を知っていたのは、一緒のクラスなんだから当然で、こんなにカッコよくて綺麗な王子様が何で噂になっていなかったのかも今、やっと分かった。



『…道留君があたしの涙を拭ってくれたんだね』


< 30 / 281 >

この作品をシェア

pagetop