メガネの裏はひとりじめⅠ
…………は?
あたしの頭には間を置いてそんな一言が飛び出してきた。
それを口に出さなかった自分を褒めてやりたいぐらいで。
今、道留君の言葉に耳を本気で疑ってしまっているあたしと、何故だかドキドキと煩く心臓を脈打たせ、顔を真っ赤にさせているあたしがいる。
そんなあたしの反応に絶対気が付いている道留君は、あたしを自分の方に向かせるためにわざと顔を背けているあたしの耳元で甘く妖艶な声色を奏でて名前を呼んだりするんだ。
それに逆らえなくて従ってしまうあたしもあたしだけど…。
やっぱり漆黒と瞳が絡み合うと逸らしたい衝動に駆られてしまい、だけどそれは道留君の声と頬っぺたに添えられた手が許してくれなかった。
「可鈴は、俺と付き合うの嫌?」
魅せる表情は真剣に、降って落ちてくる言葉はどこか悲しそうに紡がれて、あたしは顔をフルフルと小さく横に振る。
でもそのあとにカラカラに渇いた喉から声を絞り出して『…けど、』と、言葉を続けた。
『あたし…、三木と別れたばっかで…、』
そう言った瞬間、数時間前に酷い言葉を投げ付けてきた三木の顔が過り、未練なんてものはこれっぽっちもないけれど。
だけど、投げ付けられた言葉を思い出してそれが鋭い刃物となり、深く胸に突き刺さる。