メガネの裏はひとりじめⅠ
本気で好きだったからこそ別れ間際にそんなこと思っていたんだって知って。言われて。
まるで心臓を思いっきり握り潰されたような感覚だった。
それぐらい受けた言葉は痛かったんだ。
だから、いざ別の人に男と女の関係を持つ言葉を言われれば、言われるのは自分が悪いとしてもまた三木みたいにあんなことを言われてしまったら…そう考えてしまって。
同じことが続けて起きてしまったら今度はもう"恋なんかしたくない"って、思っちゃうかもしれない。
そうなることがただ、怖いんだ――…。
「…可鈴。俺は三木みたいなこと、絶対言わねぇから」
思考が三木の言葉で埋め尽くされていたあたしに、不意にそう言った柔らかい声色が向けられて。
知らぬ間に溢れていた涙で視界がボヤける中、瞳が合った漆黒はゆるりと優しく細められ、頬っぺたに添えられた手の指は一粒一粒それを確かめるように溢れる涙を拭ってくれる。
…あぁ、道留君は三木とは全てが違うんだ。
あたしの涙を拭ってくれる指が酷く暖かくて心地が良い。
道留君とは今日初めて喋ったのに、道留君が言ってくれる言葉はどれも信じられるような気がする。
だから、あたし――…。
『…道留君の彼女にして、ください…』
控えめに涙を拭い続けてくれてる道留君の漆黒を見つめてそう言えば、道留君の動いていた指はピタリと止まり。
瞬間、ソファーに沈んでいた身体は腕を引っ張られ起こされて、スッポリと道留君の腕の中に収まると、道留君はあたしを抱き締め嬉しそうにこう言った。