メガネの裏はひとりじめⅠ



道留君の肩からピョッコリと顔を出して誰が来たのかと窺うあたしと。



道留君が首をドアの方に捻って不機嫌そうにドア付近に立っている人物に言葉を飛ばしたのはほぼ同時だった。



「邪魔してんじゃねぇよ。壱翔」



――…イット?



道留君が低く口にしたどこか聞き覚えのある名前にはて?と首を傾げて、あたしは中途半端に覗かせていた瞳をドア付近に立つ人物がハッキリと見えるまで出してみる。



そしたらあたしの瞳に映った人物にあたしは驚きを隠せなかった。



そこに居た人物――…学園では先輩から同期に後輩まで、男の子からは恐れや尊敬の瞳で見られ、女の子からは好意や憧れの瞳を向けられて。



若者の中では知らない人は居ないんじゃないっかって言っても大袈裟ではないぐらい。



そんなかなり有名な暴走族に入っていると噂されている巳陵壱翔(ミササギ イット)が呆れた表情を浮かばせながら後ろ手に開けたドアを静かに閉めていたのだ。



「別、いーだろ。セックスしてたわけじゃねぇんだし」



セッ……!?



閉めたドアがパタン、と音を立てると同じに巳陵壱翔は信じられない言葉をシレッと、何の躊躇いもなしにそう口にする。



その言葉を聞いただけであたしの顔はみるみる内に耳までかぁっと真っ赤に染まってしまい、巳陵壱翔から逃げるようにして道留君の肩から出していた顔を引っ込ませ、そのまま道留君の胸に真っ赤な顔をくっ付けた。


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