メガネの裏はひとりじめⅠ
「泣くより笑ってる方が可愛いよ?」
『…え…?あの…、』
「ま、俺はどんな顔でも好きだけどね。」
涙を拭ってもらったら、今度はあっまーい。そりゃもうあたしが愛してやまないケーキとかよりも糖度高いんじゃないの!?そう思ってしまうほどに甘い声で言う甘いセリフと。
にっこり輝いた悩殺ものの素敵スマイルをプレゼントされて。ああダメだ…。あたし、死ぬ。
数十センチしか離れていないこの距離の近さ。
極上の美顔をこの距離で見るってことだけですでに耐え難いこととなっているのに。それなのに…!
そんなオプション、ほんとにいらないと心から思った。だってまだ死にたくない!生きたいもん!
―――だけど、そうは言っても甘〜いセリフを言われた途端。ドキン、と大きく音を立てて跳ねた心臓。
もとから赤かった顔がもっともっと赤くなって。言うならばリンゴ。あたしはリンゴになってしまった。
あれだけ流れていた涙はとっくの前に枯れた。目尻に溜まっていた涙も王子様が拭ってくれたおかげで今はもうない。
消えた涙で滲んでいた視界ははっきりくっきり。クリアに広がっている。
瞳の中にいるのは王子様、だけ。