メガネの裏はひとりじめⅠ
思ってもみない突然すぎる道留君の行動にあたしは反射的に下を向いていた真っ赤な顔を上へと上げる――…と。
それを狙ってか道留君の指は昨日、校舎裏で初めてメガネを外した姿であたしの前に現れた時の出来事のようにあたしの瞳に溜まっている涙をそっと拭ってくれた。
「抱き締められて恥ずかしかったんだ?」
んなななー…っ!
涙を拭ってくれる優しい指とは反対に。
あたしが身体を火照らし胸をドキドキと煩く高鳴らせた理由、顔を真っ赤にして下を向いた理由、伝えようとしていた自分の気持ちだって。
全部全部何もかも分かっていたかのような、そんな意地悪い笑みを浮かべながら道留君は悪戯な口調でそう言ってきたのだ。
涙を拭ってくれる指にドキドキと、さっきのドキドキとはまた違う意味で胸を高鳴らせていたあたしはその道留君の表情とセリフを見て聞いて。
胸のドキドキは途端に止まり、ムッと真っ赤な顔を顰めっ面に変えたなら『…バカッ!』そう言ってあからさまに顔をプイッと背けてやった。
そしたらすぐにむにゅっと背く頬っぺたを柔らかく涙を拭ってくれた指に摘まれて、苦笑混じりの声が耳に届く。
「だって恥ずかしがってんの、超可愛かったんだもん」