メガネの裏はひとりじめⅠ



『……っ!』



…道留君にバカって言ったけど、あたしの方がバカかもしれない。



不意を突かれて言われたそのセリフにムッとしてた気持ちも顰めっ面だった顔も一瞬にしてゆるゆると緩んでいく。



引いたと思っていた熱もそれだけで再び――…いや、さっきよりも高温で頬っぺたを摘まれる部分から身体全体に浸透していく。



そんなあたしの反応を眼前にしている道留君はふにゅふにゅと摘む頬っぺたを弄び、嬉しそうにクスクス喉を鳴らしていて。



もう恥ずかしすぎて、それを隠すように『…道留君のバカ』またヤジを飛ばしたその声は普通の音量どころか蚊が鳴くような小さな小さな音量で。



だけど道留君は聞き逃さず「うん。可鈴だけにね」なーんて弾む声色を返してくるもんだから、計算して言ってるの?って本気で思うぐらい。



あたしの心をガッツリ掴んで胸をキューンと大きく高鳴らせるんだ。



ヤバいヤバいヤバい……かも。



胸の高鳴りがハンパなくあたしの心拍数を上げて、身体は熱を持って涼しいはずなのに暑いし。…どうしよう。



あたし、道留君に恋してる…?


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