メガネの裏はひとりじめⅠ
「イチャついてんじゃねぇぞコラ」
道留君とはまた違う低い声で言いながら、道留君には負けるけどむちゃくちゃ綺麗な顔に呆れた表情を貼り付け現れた巳陵壱翔。
あたしの視界の片隅に浮かんだ人物とは巳陵壱翔のことで、道留君の頭を小突いたのも未だ道留君の頭から小突いたまま離れない巳陵壱翔の拳だ。
小突かれて結構痛かったらしく。
道留君は顔を歪めながら頭にある巳陵壱翔の拳を手で乱暴に払い除け、「痛ってぇな。バカかボケ」肩越しから後ろへ首を捻ってヤジを飛ばしていた。
「お前が俺をシカトしてイチャついてっからだろうが。つか普通"バカかお前"じゃねぇの?」
「…っるせぇよ。いちいち細けぇ」
「変な日本語使う奴に侮辱されたかねぇな」
「…うっぜっ」
鬱陶しそうに吐き捨てて、そう言った道留君の表情は巳陵壱翔の方を向いてるからあたしには分からないけれど。
だけど言葉や口調とは裏腹に、巳陵壱翔が道留君を小突いたみたいに道留君も巳陵壱翔の胸を拳で小突く姿はまるでじゃれてる様。
小突かれた巳陵壱翔もハハッと無邪気に笑ってるし、そんな二人の姿を見てほんとに仲が良いんだなと思う。
暫く二人を背が高いから見上げ見続けていると、後ろからチョイチョイ、と服を引っ張られ振り返ってみれば。
「……あたしも仲に入れてよぉ」