メガネの裏はひとりじめⅠ
着ていく服同様、髪型もどうするかさんざん迷って、だけど結局はいつもと同じコテで巻いた巻き髪に決めたんだけど。
それでも、いつもよりずっとずっと時間掛けて丁寧に巻いたから出来は自分で自分を褒めてしまうほどのかなりの出来栄えで。
そんな頑張ったあたしの髪が一番に見て欲しい道留君の手によってわしゃわしゃと乱れていく。
それを止めようと相変わらず顔は上げられないまま、手を宙に上げて手探りで道留君の腕を掴まえると、髪を撫で乱す手は止まった。
「んー、そうだよな。今日の可鈴、いつもよりくるんくるんで超可愛いもんな。ぐちゃぐちゃになったらもったいねぇもんな」
かぁっとまた顔に熱を帯びてしまう恥ずかしいセリフを道留君はポンポン、とあたしの頭に軽く手を弾ませながら言ってのける。
いつもよりくるんくるんなの気付いてくれてたんだ…。
褒めてくれてるのかはいまいち分からないけど、でもいつもより多く巻いたことに気付いてくれてたってことが嬉しくて。
道留君の掴む腕から手を離し、そっと上げられずにいた顔を持ち上げ道留君の漆黒と瞳をかち合わせた、…が。
「おいコラ。イチャついてねぇでいい加減こっから動こうや」
かち合ったのも束の間、痛っ、と口から漏らした道留君は巳陵壱翔にゴツンと頭を小突かれ、漆黒をすぐに巳陵壱翔へと持っていってしまった。