メガネの裏はひとりじめⅠ



痛ってぇな、何すんだよ。



小突かれたとこを手で押さえながらそうヤジを飛ばす道留君を巳陵壱翔はてんで無視。



全く聞く耳持たずで、無視したまま「俺、腹減ったんだけど」だなんて、向けられる瞳は聞いてんかよ!と声を上げる道留君には向かずに何故かあたしに向けられている。



な、何であたし…?



腹減ったって言われても食べ物なんか持ってないし、持ってるとしたらあたしが好きないちご味の飴ちゃんしかない。



そんなの巳陵壱翔は絶対に欲しがらないだろうし、もしかしてこれは早くデート開始しろよという合図…なのかな?



うん、きっとそうだ。違いない。



巳陵壱翔はここから動きたいと言っていたし、イブだって早く巳陵壱翔とデート始めたいよね。



そう巳陵壱翔のセリフを勝手にデート開始しろよっていう合図だと解釈して、あたしは『道留君』ツンツン、と不機嫌にムスッとしている道留君の服を引っ張った。



「…ん?何?」



引っ張って、あたしの方に向いた端整な顔の不機嫌になっていた表情はコロッと打って変わり、甘い柔らかな表情へと変わる。



すごいなぁー…なんて、切り替えの早さに心の中で感心しながら、あたしは「道留君はお腹減った?」引っ張った服は掴んだまま聞いた。


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