彼女が歌を歌う理由
「ミサ、うちの学校に来れたらいいのにね」
「そんな事できるわけないでしょう」
ミサは笑ってはみたが、本当に出来ないだろうか?と少々疑問に感じた。
おばあちゃんっこなミサの家の料理を食べて、今日はおもてなしされてばかりと、愛莉は笑って帰って行った。
愛莉を見送ったあと、ミサはいちもくさんにパソコンに向かった。
「出来るわけがない」
そう思いながらも調べてる自分がいた。
調べていくうちにある情報を手に入れた。
「そうだ、編入か!」
しかし、問題はミサも愛莉も公立高校だった。
公立間の編入は聞いたことない。確かに募集しているが、成功率は少ないものだった。
それでも今の自分を変えるためには、猛勉強してでもこの状況から抜け出すしか方法はないように感じた。
そうじゃなきゃ、始まったばかりの高校生活が台無しに終わる、そう思った。
夏休みに入った途端、ミサは猛勉強した。
愛莉に、愛莉の学校のノートを見せてもらったりした。
高校入試の時よりも勉強した、それくらい必死だった。
そして編入試験当日。
たった1人しか入れない枠の試験に、私の他に2人受ける生徒がいた。
ちなみに調べると、枠が1つ空いていても全員落とされる場合もあるそうだ。
むしろ落とされる方が当たり前くらいに考えた方がいいみたいだった。
「みんなどういう理由で来ているんだろう…まだこんな入学したてなのに…」
きっと向こうも同じ事を思っていたはずだった。
試験が始まり、筆記試験をしたあと、呼ばれた順番に面接部屋へ移動した。
筆記試験も面接も、手ごたえは残念ながらイマイチだった。
筆記試験と面接が終わり、当日発表だったので3時間くらいの空きがあった。
もし落ちたら前の学校に戻る事になる。でも受かれば、新しい生活が待っている。
どっちに落ちても不安だったが、やっぱり望むのは後者だった。