レンズと僕と彼女の奇妙な関係
何となく、自然に話したつもりだったが、彼女の顔が急にマニアっぽく熱を帯びてくるのが目に見えて解った時、この『眼鏡』という言葉が彼女にとって禁止ワードだと気付くのだったが、もぅ後の祭りだった。


『そぅなんです!メガネをかけると、何か世界が変わるっていうか、私の中の心の鎧っていいか、体の一部なんです、だから毎日変えているんですょ、気付いてくれたんですね!わかりますか?!』


彼女はメガネの話をすると異様にテンションが上がるのだ。


世の中には色んな趣味の方々がいる、それはロリコンやマザコンに制服フェチにヒゲマニア、そして、彼女のようにメガネマニアもいるのだった。


『今日の赤フレームは、このレンズ部分の綺麗な曲線が・・・』


まるで理解不能な言葉が続き、最後にこう締め括られたのだ――


『こんなメガネについて語れたの久しぶりです、神谷先輩もその黒渕似合ってますよ――では今度、メガネデートしますか?』


『デェ、、デェート?』


呆気にとられていたに違いない、時間が凍り付いた気がした――


恋愛初心者中の初心者の僕に・・デート? 


『迷惑ですか??』


彼女が哀しげに伏し目がちに聞いてくる――


これを逃がしたら一生孤独に生きるに違いない!


僕の頭は高速回転するコンピュター並みにすぐに答えをはじき出す。


『いいねぇ、、ど、、どこにいく?』 

彼女はニンマリと笑うとウィングした、まるで小悪魔的な魅力を振りまいて――この魅力に克てる人間は人間ではなぃ!断じてない!

頭の中でドイツ風の軍服を着た自分が高らかに民衆に壇上の前で声を張り上げる妄想が広がる。


『私の理想のデートプランなんで内緒です』


この時の自分にはデートの前に付いた3文字の言葉はかき消されていた、それくらい舞い上がっていたのだ

今、木があれば間違えなく豚でない俺もあがるだろうさ――

笑う奴がいたら笑えばいい・・・いまなら、笑われても許せる覚悟がある。




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