ろうそくの炎
ろうそくはある日、見てしまいました。


夜中、やみの中でかたをふるわせ女の子が泣いているところを。



「マ、マ…」



女の子はなんどもそうつぶやいていました。



ろうそくはその時きめました。



――この家をでて行こう



もちろんそんなことをしたからといって、ろうそくが自分をゆるせるわけではありません。


ろうそくは逃げたのです。


自分のせいで泣いている女の子と、自分のせいでわすれられてしまうママの存在から。



「さようなら…ありがとう。…ごめんなさい」



ろうそくはなきませんでした。


ないてしまったら、けっしんがにぶってしまうからです。



”家にいてもいいんじゃないか”


頭にふとうかんだあまい考えを、ろうそくは頭の中からすぐにけしました。
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