キミが居た病院
すると父親は優香の頭を優しく撫で、落ち着かせてくれた。
「優香。寂しいのはパパも一緒だからね」
「……うん」
「ちょっとパパから忠告があるんだけどね、聞いてくれるかな」
「あ、うん」
既に意識が朦朧としていた。
手を握る感覚はハッキリとあるのだが、目をつぶってしまったら、きっと目が覚めた時は病院のベッドだろう。
「優香の前に現れた優しい王子様――あの子を信用してはいけないよ」
「えっ? それどういう……」
言いかけたところで意識が落ちた。
最後の言葉を残したときの父親の切ない顔が、やけに頭に残る。